Update:

ルームシューズ ストーリー #2

「1人1人の仕事観」

仕事観。誰もがそれぞれの経験則をもとに出来上がる慣習、価値観、責任感。
その違いがあるために、問題が生じるのはどの場所でも一緒のことだと思います。

農家出身の方が多い飯館村では、多く出来た野菜を周りの方へおすそ分けするのはよくある風景。
ある日、同じことが集会所でも起きてしまったそうです。

「多分、予定より多くできたルームシューズをおすそ分けするのは村の方にとってはごく普通のことだったのだと思います。けれどもやっぱり商品として売れるものですからね(笑)最初は戸惑いました。一方的に指摘するのではなく、想像してもらう、視野を広げてもらうことに注力しました。」

1204

また、エコたわしの作る数が増えてきた時、仕上がりの品質や色の組み合わせで気になる商品もあったそう。そこで、今後も継続していくためには「より良い物」を作らないといけないと話をしたところ、やや表情が曇った方もいたそうです。

それがみるみるうちに伝播してしまい、一時は「もう編み物はしたくない」と言い始めた方達と対立した構図になってしまったことも。

「楽しくやっていたはずの編み物だけど、沢山のことを気にするのがちょっと窮屈だったのかもしれません。そこまでして作りたくない、、と感じてしまったようでう。」と笹久保さんは話す。

しかし、その時は皆さんがやめたいというなら、その声も尊重した方がよいのだろうと思われたそうです。震災後、自ら始めた活動ではあるけれど、仮設の皆さんの気持ちや自発性も尊重したい。「してあげる」、「される」の関係の活動ではなく、お互いに出来ることを精一杯するという関係でありたい。

1183

どうやって解決されたのですか?

「現場をまとめてくれる北原さんの『お世話になっている先生に何故そんなことを言うの?本当に編み物やめていいの?』という1人1人への問いかけで解決したんです。多分、みなさんも意地になったところがあったのだと思います。あとで北原さんに聞いたら、やっぱり皆さん編み物が好きで、続けたいという声が沢山あったそうなんです。」

1180v1s

この一件でお互いの気持ちをもっと素直に話せるように、いい経験だったと振り返る。

仕事観、自分にとって何が譲れない軸なのかをわかっている人は強い。

でも、どこで何をしようとも、自分にとって大切だと感じるポイントは人ぞれぞれで、
譲れないところや、譲れるところ、相手の思い、
それらを対話を通してお互い理解しようとし、
それを分かりあえた瞬間、絆はもっと強くなるのかもしれない。

「大事なことは、時間をかけること」

仮設での編み物指導を続けて約3年間。
笹久保さんは復興に向けて動く相馬市の変化や、また仮設で暮らす人々の生活の変化を見てきた。
そして、編み手さんの気持ちの変化も。

ふるさと、家、家族、仕事、色んな困難を乗り越えている人々に対して
自分が何が出来るかを常に考えながら、相馬に通い続けた。

少しでも「編み物」を通じて、心安らぐ時間を提供したい。

その思いは、楽しくおしゃべりをしながら編み物をしている女性達の姿、更にはルームシューズに対して「もっとこうしたら綺麗にできるのでは?」と積極的に意見をしてくれる姿をみて、形になってきたと感じている。趣味から仕事へと変化しつつある。

1266s

笹久保さんは編み物のプロではあるが、決して支援のプロではない。
けれども、編み物が時間をかけることで美しい作品になるように
笹久保さんの活動も長く時間をかけることでかけがえのない成果をもたらしている。

つづく

商品の詳細はこちら 春先足元の冷えに ウールのフェルトルームシューズ


関連記事

Comment





Comment